梅花女子大学 児童文学科・こども学科同窓会Salut!

第15回あたらしい創作絵本大賞審査結果

 第15回あたらしい絵本大賞

大賞作品は、出版されます。
あたらしい創作絵本大賞は、こどものためのロングセラー絵本を創作する人を発掘していくコンテストです。

たくさんのご応募ありがとうございました。
表彰式と合評会は6月22日(土)に開催します。
第15回あたらしい創作絵本大賞 表彰式&合評会のご案内

各賞の審査結果は以下の通りです。
審査員の長野ヒデ子先生は、体調不良のため審査会を欠席となり、残りの審査員で受賞作品の決定を行いました。

大賞   なし


■優秀賞
「もぐらのモーリー」 おおつき じゅんこ

佳作 5作品
「いちばんたいせつなもの」 たばた まさる
「ぼくらのえんそく」 とーも
「おまけのおばけ」 やまかわ のりお
「よるでかいスイカでるよ」 むらかみ なな
「はるがきたら」 糸巻 まき


■おしくも選外
「もしも魔法の手紙が届いたら」 やまとうみ
 絵はかわいらしくて、物語展開もよかった。ただ、絵本というよりも童話作品になっているのは残念。絵本の表現方法でチャレンジして欲しい。



作品選考の際には、審査を公平にするため、作者プロフィールは確認せず、作品のみを読んで審査しています。

審査員総評(50音順)

香曽我部 秀幸
今回は残念ながら大賞作品が出ませんでした。すばらしい視覚表現がなされているものも見受けられましたが、何故この結果となったのでしょうか。
前回も同じことを申しましたが、物語のテーマと語り方に弱点があるということに尽きます。絵本の物語作りはただ単に起→承→転→結が整っていればよいというのではなく、読者に感動や驚き、喜びを与えるものでなければなりません。また一見面白い題材であっても、飛躍がありすぎて独りよがりになると読者から見放されてしまいます。絵本の作り手は物語と絵を通じて読者に何を感じてほしいのかをもっと強く意識してほしいと思います。
そんな中にあって優秀賞受賞作品は、本来敵であったタカを見捨てることなく助けようとするモグラに対して、読者の子どもたちは強い共感を抱くことができましょう。ことばの選択も的確で、さらに何と言っても透明水彩の暈しと滲みの効果を最大限に生かした麗しい画面は見事でした。個人的に言えば大賞に推しても良い作品だったかと思います。ただ物語の構造としてはあまりに予定調和的に進んでしまって起伏に欠ける点が少々物足りなかったといえましょう。
賞や佳作を逃した作品にもアイデアの面白さや、発想の斬新さに眼を惹かれるものもありましたが、話し手にブレがあったり、その魅力が絵本表現として不充分に終わっている作品が見受けられ、残念な思いです。


みやざき ひろかず
『もぐらのモーリー』
画力があり水彩画の技法もすばらしいと思いました。大賞にとどかなかった理由は、どこか既視感のあるおはなしではっとするような新しさがなかったことです。
『いちばんたいせつなもの』
登場するたくさんのキャラクターをうまく描かれています。森の生き物=善良、オオカミ=悪者、というのはよくある設定、新しい発想を期待します。
『ぼくらのえんそく』
ぬいぐるみの気持ちになって描かれているストーリーはとてもおもしろい! かろやかな絵も魅力的です。ぬいぐるみの悲哀や人とのふれあいにもう一歩踏みこんだ内容になったらすてきな絵本になると思うのですが。
『おまけのおばけ』
絵もすてきでおはなしもまとまってはいるのですが、なにかもの足りない。もっと驚かせてほしいしもっとおまけの世界に連れて行ってほしいと思いました。
『よるでかいスイカでるよ』
回文はおもしろくよく考えられていると思います。(すこしむりやりな部分もあるようなきがしますが…) あとは回文がもっと生きるような絵を添えて描き文字もひと工夫したいですね。
『はるがきたら』
優しくやわらかい絵が魅力的です。詩のように展開するおはなしもすてきです。春が来て雪だるまが融けるというのはなんとなくわかってしまいますね。もうすこし意外なドラマがほしい気がします。


宮下 恵茉
今年は応募数が例年に比べ少なかったのが影響したのか、残念ながら大賞はでませんでした。その中にあって『もぐらのモーリー』に評価が集まり、優秀賞に輝きました。おめでとうございます! 大賞にあとすこし届かなかったのは、テキストを含めストーリー展開が弱いという意見が多く出たからかもしれません。今回、最終選考に残ったどの作品にも言えることですが『ストーリーの新しさ』『テキストの推敲』にも今一度目を向けてもらえると、よりおもしろい絵本になるのではないかと思います。また、タイトルに魅力が薄いのも気になりました。本棚に並んでいるときに「読んでみたい!」と思えるようなタイトルもぜひ考えてみてください。
個人的にはオリジナリティあふれる回文が楽しい『よるでかいスイカでるよ』、親しみのある絵柄の『はるがきたら』、アイディアがおもしろい『おまけのおばけ』が印象に残りました。次回も、『あたしくておもしろい絵本』に出会えることを楽しみにしています。


森 貴志
絵本とは、「絵」と「ことば(文字テキスト)」によって成り立つメディアです。たとえば物語なら、それを絵とことばの両者の表現によって描き、「本」として束ねます。
今回、残念ながら大賞受賞作がなかったのは、そのバランスを欠いたものが多かったことに原因のひとつがあると思います。特にことばによる説明が冗長すぎる作品が多く、絵とことばそれぞれの役割を考えて構成することの大切さにあらためて気づく審査会でした。ことばを最小限にまで削り、絵を描き込むことで、研ぎ澄まされた作品になるのではないでしょうか。
そんななかで優秀賞を受賞した「もぐらのモーリー」は、絵とことばによって物語が表現されています。後半の展開がやや急な気もしますが、ほとんどの審査員がこの作品を評価しました。
本絵本賞の名称は「あたらしい創作絵本大賞」です。新鮮さ、オリジナル性にも期待します。
次回は大賞受賞作が生まれることを祈りつつ、たくさんの応募作が届くことを楽しみにしています。


創作絵本大賞 事務局
優秀賞の『もぐらのモーリー』は、絵の表現がすばらしく、物語にもう少し盛り上がりがあればさらによかったのにと思え、大賞まであともう一歩たらずで、もったいなかったです。
今年の応募作品は、新しい感覚を入れているけれども、奇をてらいすぎて読者に意味が伝わりにくい作品か、話はまとまっているけれども無難な作品かのどちらかに偏っていたように思います。また、幼年童話に絵をつけたような作品も多く、絵本と童話の違いが、はっきりしていない印象でした。
「作品の足りていない部分を書き直して出版する」という方法もとれるのですが、必ずしも書き直しが、うまくできる人ばかりではないということをふまえて、今回は残念ながら大賞作品を選ぶことができませんでした。
来年こそは大賞作品を選びたいです。



主催:梅花女子大学
共催:梅花女子大学児童文学科・こども学科(児童文学・絵本コース)同窓会、アミーニ(運営・事務局)梅花女子大学こども教育学科
協賛:株式会社未来屋書店

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