第3回あたらしい創作絵本大賞 審査結果

★児童文学科設立30周年記念企画★
第3回あたらしい絵本大賞

第3回あたらしい創作絵本大賞の結果が発表されました。

■大賞
「ぼくとミーコ ―よるのおさんぽ―」 仙田 まどか
ぼくとミーコ
●プロフィール
1976年生まれ。京都府京都市在住。梅花女子大学大学院児童文学専攻博士課程満期退学。
幼少期に母が毎晩読んでくれた『モモ』に感銘を受けて小説家になりたいと思う。
大学時代に童話制作および絵本制作をするうちに絵の面白さに目覚める。
それから毎日、絵本作家になりたい一心で絵本を描き続けています。
第23回ニッサン童話と絵本のグランプリ 優秀賞受賞。
第24、25、26回ニッサン童話と絵本のグランプリ 佳作受賞。
第5回MOEイラスト・絵本大賞 佳作受賞。
月刊誌『MOE』(2010年6月号)4ページ絵本劇場に『ぼくのマグ』掲載。

●受賞コメント
その日はとてもいい天気で、朝からばたばたと普段しない大掃除をしていました。最後にリビングを掃除し終え「やれやれすっきりした」と掃除機のスイッチを切ったとき、電話が鳴りました。あわてて出てみると受賞のお知らせでした。嬉しくて思わず涙がでました。
「ぼくとミーコ」は身近な人がモデルとなっています。初めて素直な気持ちで描けた作品です。ぼくとねこのミーコが絵本という空間の中で全身全霊で遊びまわれたらどんなに楽しいだろうと、それだけを考えて作った作品です。作成途中、画面構成や色、展開に何度も悩んだ日々もありましたが「ぼくとミーコ」をなんとか最終地点に着地させたくて夢中で描きました。
審査員の先生方に感謝いたします。ありがとうございました。
これからも躍動感ある作品をたくさん描きたいです。


■優秀賞 2作品
「どこどこトイレ」 しばの りさ
どこどこトイレ

「海の天使」 多名賀 優子
膿の天使


■佳作(作品受付順)
「かきのき」 竹内 香ノ子
「オオカミがきたら、どうする?」 松田 幸子・作 / 江洲 恵・絵
「たまちゃん」 奥田 睦美
「おねえちゃんがヒヨコをかってきた」 森下 知永


■最終選考に残ったが佳作に選ばれなかった作品
「かたつむりおじさん」 稗島 ノリコ
「メイメイさんのすきなもの」 金尾 美保子
「へんしん へびくん」 居戸木 絵里
「ドキドキバースデーケーキ」 みやち あつし
「こぶたくんのタクシー」 ささき ひろこ
「ぼくは こども だから」 むとう だいじろう
「100にんのあかちゃんと」 松本 みさこ
「はなから スイカ!!」 つるおか のぶえ
「たまごがきらい」 寺山 智子
「ほしのちず」 mitaka

作品選考の際には、審査を公平にするため、作者プロフィールは確認せず、作品のみを読んで審査しています。


審査員総評(50音順)

香曽我部 秀幸
大賞の「ぼくとミーコ ―よるのおさんぽ―」は、画面いっぱいにエネルギーが迸り、最終場面まで読者をグイグイと引っ張っていく画力に圧倒されました。物語は粗削りで大幅な修正は必要ですが、今後の活躍が期待できそうです。
優秀賞「どこどこトイレ」は、着想の面白さと絵の表現(とくにスピード感)が呼応して大賞作品に劣らぬ高い評価を得ました。「海の天使」のデコラティブなコラージュ、佳作「かきのき」のパステルによるスクラッチ、「たまちゃん」の色鉛筆による美しいマチエールなど、画面に独自の魅力を持つ作品はあるのですが、いずれも物語に今一つ斬新さが感じられません。「おねえちゃんがヒヨコをかってきた」も絵の破壊力と破茶目茶な展開が眼を惹きましたが、物語が中途半端で終わってしまった点が残念です。視覚(絵画)表現だけではなく、絵本の他の二つの大切な要素である「物語」の構成と「詞」の表現について、さらなる研鑚を積んで行かれることを期待します。

富安 陽子
「あたらしい創作絵本大賞」も第三回を迎え応募点数も昨年をかなり上まわりました。全体的に絵のレベルが上がってきたな…というのが最初の印象です。ただ、やはり、テキストの評価という点では、なかなか難しく、文体や言葉が熟れていなかったり、展開が単調だったり、最後が尻切れとんぼにおわってしまっていたりで『これは、いいな!』という物語に出逢うことはできませんでした。
大賞の仙田まどかさんの「ぼくとミーコ―よるのおさんぽ―」は、なんといっても一場面ごとの絵の中に詰め込まれたパワーとワクワク感が圧倒的で強く心惹かれました。
芝野梨沙さんの「どこどこトイレ」は絵本というより紙芝居向きの展開…とはいうものの発想の面白さはピカイチで絵にも好感がもてました。多名賀優子さんの「海の天使」は絵の表現が新鮮で今まで見たことのない世界を見せてもらった気がします。新しい可能性を感じる作品でした。この二作品は優劣がつけ難いということで今回は優秀賞が二作品という結果になったわけです。

長野 ヒデ子
「ぼくとミーコ ―よるのおさんぽ―」のグランプリ作品は爆発していてすごいエネルギーを感じた。井上洋介さんに似ているけど、とにかく突き抜けて度肝を抜くほどのストーリの展開も、描き方も並はずれていい。でもタイトルがつまらない。タイトルはすべてを表すもの、新鮮なタイトルをつけてほしいなあ。タイトルで作品がさらに良くなる。タイトルは大事。言葉には力があるから、どんな言葉を選ぶかで作品を大きく左右する。
優秀賞の「どこどこトイレ」は実に面白かった。この展開は紙芝居的。これ絵本じゃなくて12枚に整理して紙芝居にして演じたらいい。話の展開も、絵の描き方も紙芝居的だ。これ紙芝居にしようよ!「海の天使」は面白い絵!今風のデコキャラ携帯から飛び出したような面白さが満載で「おお!やるわねえ!」と新鮮な驚きがあった。このコラージュの自由さとおおらかさがなんとも楽しい。残念なのはお話。絵本って本当に絵も文もできないとダメなので難しいのですよ。
佳作の「かきのき」は本当にきもちのいい絵。最初これグランプリにと皆思ったのです。素直で、丁寧で、ストーリーにも無駄がなく、ちょっと哲学的で気持ちのいい作品です。それだけに「もう一つ何かがほしいなあ」と厳しい目で評価されました。これからもめげずに頑張ってほしいです。「オオカミがきたらどうする」はなかなか卒ながなく、これだけまとまっていて仕上げるのは簡単なようでとても難しいことなのですよ。それを楽しくぐいぐい引き込むように展開させてうまい。残念なのは絵のオリジナル性を問われたのかもしれません。でもこれは幼児絵本として出版できると思う。「玉ちゃん」はお話も絵も素直でよかったけど素直さにもう一つ力がほしかったなあ。入賞は逃したが、「100人のあかちゃんと」は発想が面白く「はなからスイカ!」もユーモアが一味ちがっていたし、刺繍の丁寧な「メイメイさんのすきなもの」も気になった。

みやざき ひろかず
絵本というには文章が長く読み物的な作品が多かった。絵本は文章で説明するのではなく、もっと絵で語ってほしいと思う。
「ぼくとミーコ ーよるのおさんぽー」は、男の子の心の中にあるエネルギーのようなものが奔放なタッチでよく表現されている。ストーリーも無駄がなくシンプルで力強い。読後感がスカッとしているのも心地よくて絵本の持つパワーを感じた。
「どこどこトイレ」は、とってもおもしろい作品!絵もわかりやすく子どももきっと大好きにちがいない。絵にもっと個性的な味わいが加わればさらにすばらしい作品になると思う。「海の天使」は、絵がとてもユニークで魅力的、今までに見たことがないような絵だ。お話がこの絵をもっと生かせる事が出来たら大賞候補になったと思う。
佳作の「オオカミがきたら、どうする?」は、よくできた作品で評価も高かったが、もう少し新鮮さがほしいと思う。


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